RX 9060 XTは、2025年6月6日に発売されたRX 9000シリーズのミドルレンジモデルに位置づけられるGPUです。
RDNA4アーキテクチャに刷新されたことで、先代モデルのRX 7600 XTよりも性能が向上しただけでなく、機械学習(ML)ベースのFSR4という新しいアップスケーリングにも対応しました。
また、RX 7600 XTと同じく、VRAM8GB版とVRAM16GB版の2つのモデルが展開されているにも大きな特徴となっています。
本記事では、RX 9060 XTの16GB版の基本性能や特徴を詳しく解説し、実際のゲームでのパフォーマンスを検証します。最後にRX 9060 XT搭載のおすすめゲーミングPCを紹介します。
RX 9060 XTの仕様
| RX 9060 XT 16GB | RX 7600 XT | |
| アーキテクチャー | RDNA 4 | RDNA 3 |
| CU | 32基 | 32基 |
| SP | 2048基 | 2048基 |
| Ray Accelerator | 32基 | 32基 |
| AI Accelerator | 64基 | – |
| ROP | 64基 | 64基 |
| テクスチャーユニット | 128基 | 128基 |
| ベース/ブーストクロック | 2530MHz / 3130MHz | 2470MHz / 2755MHz |
| VRAM | GDDR6 16GB | GDDR6 16GB |
| メモリーデータレート | 20Gbps | 18Gbps |
| メモリーバス幅 | 128bit | 128bit |
| メモリー帯域幅 | 322.3GB/s | 288GB/s |
| Infinity Cache | 32MB | 32MB |
| PCI-Express | Gen5×16 | Gen4×8 |
| 補助電源コネクター | 8ピン×1 | 8ピン×1 |
| グラフィックスカード電力 | 160W | 190W |
先代モデルのRX 7600 XTとスペックを比較すると、アーキテクチャーが進化した以外、違いはほどんどありません。
ただ、RDNA4になったことで、レイトレーシング性能の強化、機械学習(ML)ベースのFSR4など、様々な点で進化を遂げました。
ビデオカード単体の価格ですがVRAM16GB版は5万円代前半を維持している印象です。同じVRAM16GBを搭載している競合のRTX 5060 Tiと比べて約2万円ほど安く、コストパフォーマンスに優れています。
RX 9060 XTの特徴
FSR4に対応

AMDの最新アップスケーリングの「FSR 4」は機械学習(ML)ベースになっており、従来のFSR 3.1から大幅に画質が向上しています。
この技術は、RDNA 4アーキテクチャを採用したAMD Radeon RX 9000シリーズ専用となっています。もちろん、RX 9060 XTも対応しています。


草木の描写を比較すると、FSR3ではボヤケて描写されているのに対して、FSR4ではクッキリと描写されています。

FSR4はAdrenalin Edition上でオーバーライドすることで設定できます。

オーバライドするとゲーム上のアップスケーリングがFSR3ではなく、FSR4になっていれば設定は成功です。
VRAM16GB

VRAMはGPU専用のメモリで、主にゲーム中に激しく消費します。VRAMにはGPUごとに容量が決まっていて、このVRAM容量の消費がGPUの搭載量を超えたとき、ゲームのフレームレートがガタ落ちし、快適性が損なわれます。
ゲームによっては最悪、起動しないなんてことも。
そんなVRAMですが、RX 9060 XTのVRAM容量は16GBと余裕の容量です。高負荷なゲームでは、VRAM不足の心配なく、ゲームをプレーできます。
ただし、VRAM8GB版だと、VRAM不足に陥いる可能性が高くなるので、その点は注意が必要です。
MFGに対応する機能がない

「MFG(Multi Frame Generation)」は、最大3つのフレームを追加し爆発的にフレームレートが伸びる、最新フレーム生成技術です。
このMFGは、NVIDIAのRTX 50シリーズ限定で使える機能です。当然のことながら、RADEONでは使えません。また、RADEON側では現時点でMFGのような技術は実装されていません。
そのため、フレームレートでは、MFGを有効にしたNVIDIA勢を大きく下回るケースが多々あります。
パストレーシング性能が低い
パストレーシングは、従来のレイトレーシングをさらに進化させた、まさに「真のレイトレーシング」と呼べる技術です。
この技術の最大の魅力は、現実世界の光の動きを忠実に再現することで、光の反射や影を驚くほどリアルにし、ゲームの臨場感を格段に高めてくれる点にあります。
しかし、その圧倒的なリアリティと引き換えに、パストレーシングは非常に高いグラフィック負荷がかかるという大きなデメリットがあります。
特に現状では、NVIDIAのGPUがこの分野をリードしており、AMD RADEONにとっては最もパフォーマンスを出しづらい技術とされています。
そのため、RADEONのGPUでパストレーシングを有効にすると、期待したようにフレームレートが伸びず、スムーズなゲーム体験を得るのが難しくなる可能性があります。
検証環境
検証するゲームタイトルについて
ここからはゲームベンチマークでRX 9060 XTのゲーム性能を検証します。
検証したゲームタイトルは下記の8タイトルです。
- Assassin’s Creed Shadows
- Ghost of Tsushima
- Monster Hunter Wilds
- Cyberpunk 2077
- Marvel Rivals
- FFXIV: 黄金のレガシー
- Stellar Blade
- F1 25
ゲームのグラフィックはそのゲーム内の最高設定にしています。また、フレーム生成は有効にし、MFG対応ゲームにおいてはMFG×4に設定しています。
比較対象のグラボ
RX 9060 XTの比較対象として下記のグラボを用意しました。
- RTX 5070(VRAM12GB)
- RTX 5060 Ti(VRAM16GB)
- RTX 5060(VRAM8GB)
- RX 9070 XT(VRAM16GB)
- RX 7600(8GB)
RTX 5060 TiはVRAM16GB搭載モデルを使用しています。

3Dグラフィックス性能測定のためのベンチマークソフトの3D Markで、今回検証に使用したGPUのスコアを比較しました。
ラスタライズ性能をテストするSteel Nomad、レイトレーシング性能をテストするSpeed Wayの2種類のテストを使用しました。
RX 9060 XTのスコアはライバルのRTX 5060 Tiと比較すると、Steel Nomadでは若干上回っていますが、Speed Wayでは約35%下回っています。
RDNA4アーキテクチャで、レイトレーシング性能は大きく向上しましたが、それでもなお、レイトレーシング性能ではNVIDIAのGPU相手だと分が悪いです。
検証機のスペック

| パーツ | 製品名 |
|---|---|
| マザーボード | ASUS ROG STRIX B650-A GAMING WIFI |
| CPU | Ryzen 7 7800X3D |
| ビデオカード | ZOTAC GAMING GeForce RTX 5050 SOLO |
| CPUクーラー | PCCOOLER GAME ICE K4 |
| メモリ | Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモ (16GB×2、DDR5-4800) |
| システム用SSD | WD_BLACK SN770 NVMe |
| アプリケーション用SSD | Kingston NV3 |
| 電源 | MSI MAG A850GL PCIE5 |
| PCケース | 長尾製作所 SMZ-2WBT-ATX |
| OS | Windows 11 HOME(24H2) |
| 電源プラン | バランス |
CPUにはRyzen 7 7800X3Dを使用しています。3DVキャッシュを搭載しており、ゲーム性能が非常に高いCPUです。RX 9060 XTの性能を最大限引き出すことができます。


「玄人志向 RD-RX9060XT-E16GB/DF」です。デュアルファン仕様のモデルで、カード長は202mmと短いです。パックプレートも装着されています。ブラックモデルだけでなく、ホワイトモデルも用意されています。
RX 9060 XTのゲーム性能
Assassin’s Creed Shadowsの平均fps

・画質:最高
・レイトレーシング:全体的に拡散+反射
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
・フレーム生成:有効

RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで86fps、WQHDで72fps、4Kで51fpsでした。
NVIDIA製のGPUはMFG×4を有効にしているので、平均フレームレートで、ライバルのRTX 5060 TiだけでなくRTX 5060も下回っています。
Ghost of Tsushimaの平均fps

・画質:非常に高い
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※1分間フィールドを馬で駆け抜けてるときに計測

RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで190fps、WQHDで152fps、4Kで97fpsでした。
RADEON有利なゲームなので、平均フレームレートは、ライバルのRTX 5060 Tiを大幅に上回ります。
Monster Hunter Wildsの平均fps

・画質:ウルトラ
・レイトレーシング:高
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークソフトで計測

RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで133fps、WQHDで106fps、4Kで67fpsでした。
RADEON有利なゲームなので、平均フレームレートは、ライバルのRTX 5060 Tiを大幅に上回ります。
ウルトラ設定では、VRAM消費が8GBを超えるため、VRAM8GBのRTX 5060の平均フレームレートは大きく伸び悩んでいます。

RX 7600もVRAM8GBですが、平均フレームレートは思ったほど落ち込んでいません。ただし、RADEONの場合、VRAM不足だとテクスチャの質を下げてフレームレートを稼ぐ傾向があり、グラフィックはかなり汚いです。
Cyberpunk 2077の平均fps


・画質:オーバードライブ
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測


RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで80fps、WQHDで49fps、4Kで23fpsでした。
オーバードライブ設定にすると自動的にパストレーシングが有効になり、VRAM消費が8GBを超えます。そのため、VRAM8GBのRTX 5060、RX 7600の平均fpsは伸び悩んでいます。
一方、RX 9060 XTはVRAM16GB搭載しているため、VRAM不足の影響は受けず、フレームレートの落ち込みは防げています。
ただし、パストレーシング性能が低いこともあって、平均フレームレートでライバルのRTX 5060 Tiを大きく下回っています。
Marvel Rivalsの平均fps


・画質:最高
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測


RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで163fps、WQHDで120fps、4Kで66fpsでした。
NVIDIA製のGPUはMFG×4を有効にしているので、平均フレームレートで、ライバルのRTX 5060 TiだけでなくRTX 5060も下回っています。
FFXIV: 黄金のレガシーの平均fps


・画質:最高
※ベンチマークソフトで計測


RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで145fps、WQHDで90fps、4Kで42fpsでした。
このゲームはNVIDIAに最適化されているため、平均フレームレートで、ライバルのRTX 5060 TiだけでなくRTX 5060も下回っています。
Stellar Bladeの平均fps


・画質:とても高い
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※1分間走ってフレームレートを計測


RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで155fps、WQHDで122fps、4Kで70fpsでした。
NVIDIA製のGPUはMFG×4を有効にしているので、平均フレームレートで、ライバルのRTX 5060 TiだけでなくRTX 5060も下回っています。
F1 25の平均fps


・画質:超最大
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測


RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで81fps、WQHDで47fps、4Kで22fpsでした。
NVIDIA製のGPUはMFG×4を有効にしているので、平均フレームレートで、ライバルのRTX 5060 TiだけでなくRTX 5060も下回っています。
超最大設定にするとパストレーシングが有効になるので、RADEONのGPUの平均フレームレートは伸び悩んでいます。
RX 9060 XTの消費電力


ラトックシステムのワットチェッカーの「RS-BTWATCH2」を使用し、GPU単体ではなく、システム全体の消費電力を測定します。
上記の表は、FFXIV: 黄金のレガシーベンチマーク(4K・最高設定)実行中の平均・最大消費電力をまとめたものです。
RX 9060 XTの消費電力は、ライバルのRTX 5060 Tiより若干上ですが、そこまで大きな差がない印象です。
旧世代のRX 7600と比べた場合、消費電力はほぼ変わらなく、それでいてゲーム性能は大きく向上しています。旧世代からワットパフォーマンスは大きく向上しています。
RX 9060 XTのレビューまとめ


- フルHDゲーミングに最適
- WQHDゲーミングも十分可能
- ゲームによっては4Kゲームも十分可能
- ワットパフォーマンスは優秀
- コストパフォーマンスが高い
- FSR4に対応
- MFGに相当する機能なし
- パストレーシング性能が低い
- VRAM8GB版とVRAM16GB版の2種類があり、分かりづらい
同じVRAM16GB搭載モデルで比較すると、「RX 9060 XT」は競合の「RTX 5060 Ti」よりも2万円安く手に入るコストパフォーマンスの高いグラフィックボードです。
新しいアップスケーリングの「FSR4」適用で画質を向上でき、さらに旧世代で苦手だったらレイトレーシング性能も向上しており、レイトレーシング有効時でも十分実用に耐えます。
ただし、パストレーシング性能が低く、さらにMFG相当の機能がないので、ゲームによっては、平均フレームレートで、RTX 5060 TiどころかRTX 5060を下回る可能性があるので、その点は注意が必要です。
基本的にパストレーシングの設定をオフにしてゲームを遊ぶことが推奨されます。
RX 9060 XTのおすすめゲーミングPC
【Z1series】Ryzen 7 5700x・RX 9060 XT 16G


| 【Z1series】Ryzen 7 5700x・RX 9060 XT 16Gのスペック | |
|---|---|
| OS | Windows 11 home |
| CPU | Ryzen7 5700x |
| GPU | RX 9060 XT 16G |
| CPUクーラー | 空冷 |
| メモリ | 32GB(16GB×2) |
| ストレージ | 1TB(M.2 SSD) |
| マザーボード | MSI A520M-A PRO |
| 電源 | 650W 80 PLUS BRONZE |
| 無線LAN | 無し |
| 保証期間 | 1年 |
| 価格 | 144,800円 ※クーポン「OZM2501」適用価格 |
まとめ
RX 9060 XTはVRAM16GB搭載しているにも関わらず、価格が抑えられているのが最大の魅力です。
搭載ゲーミングPCも最安モデルであれば、14万円代で購入でき、比較的買いやすいです。
VRAM容量を気にせずゲームをプレーしたい、そしてなるべく予算を抑えたいというのであれば、RX 9060 XT搭載モデルはおすすめできます。
よくある質問まとめ
- RX 9060 XT搭載モデルは初心者におすすめですか?
-
VRAM16GB版搭載モデルでも、一番安いモデルで15万円以下で購入できるので、初心者の方でも比較的買いやすいです。
- RX 9060 XTにはVRAM8GB版がありますが、VRAM16GB版とどっちがおすすめですか?
-
RX 9060 XT最大の魅力が、VRAM16GBを搭載しているにも関わらず、低価格という点です。8GB版はもっと安いですが、VRAM不足に陥りやすく、間違いなくストレスを感じるかと思います。多少高くとも、VRAM16GB版をおすすめします。
- CPUは何がおすすめですか?
-
RX 9060 XTはミドルクラス帯のGPUですが、侮れないゲーム性能を持っています。Ryzen 5 4500のようなゲーム性能が低いCPUだと間違いなく性能を引き出せません。最低でもRyzen 7 5700 Xあたりをおすすめします。
- RTX 5060 TiとRX 9060 XT、どちらがおすすめですか?
-
基本的なゲーム性能はRTX 5060 Tiの方が優秀です。MFGが使えたり、パストレーシング性能が高いなど、RX 9060 XTにはない強みがあります。ただ、VRAM16GB搭載モデルで比較すると、ビデオカード単体では約2万円近く、RX 9060 XTが安くコストパフォーマンスが高いです。ちなみにゲーミングPCも最安モデルで比較すると、2万円ほどの差があります。少しでも予算を抑えたいのであれば、RX 9060 XT搭載モデルを選ぶのは有りかと思います。
- FSR4に設定したらフレームレートは伸びますか?
-
残念ながらFSR4に設定してもフレームレートは伸びません。FSR4はあくまでも画質向上が目的です。
動画版はこちらから↓↓
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