RX 9070 XTは、無印のRX 9070と共に、2024年3月7日に発売されたRX 9000シリーズのハイエンドに位置づけられるGPUです。
RDNA4アーキテクチャに刷新されたことで、先代モデルのRX 7900 XTよりも性能が向上しただけでなく、機械学習(ML)ベースのFSR4という新しいアップスケーリングにも対応しました。
本記事では、RX 9070 XTの基本性能や特徴を詳しく解説し、実際のゲームでのパフォーマンスを検証します。最後にRX 9070 XT搭載のおすすめゲーミングPCを紹介します。
RX 9070 XTの仕様
| RX 9070 XT | RX 9070 | RX 7900 XT | |
| アーキテクチャー | RDNA 4 | RDNA 4 | RDNA 3 |
| CU | 64基 | 56基 | 84基 |
| SP | 4096基 | 3584基 | 5376基 |
| Ray Accelerator | 64基 | 56基 | 84基 |
| AI Accelerator | 128基 | 112基 | 168基 |
| ROP | 128基 | 128基 | 192基 |
| テクスチャーユニット | 256基 | 256基 | 336基 |
| ベース/ブーストクロック | 2400MHz / 2970MHz | 2070MHz / 2520MHz | 2,000MHz / 2,400MHz |
| VRAM | GDDR6 16GB | GDDR6 16GB | GDDR6 20GB |
| メモリーデータレート | 20Gbps | 20Gbps | 20Gbps |
| メモリインターフェイス | 256bit | 256bit | 320bit |
| メモリ帯域幅 | 640GB/s | 640GB/s | 800GB/s |
| Infinity Cache | 64MB | 64MB | 80MB |
| PCI-Express | Gen5×16 | Gen5×16 | Gen4×16 |
| グラフィックスカード電力 | 304W | 220W | 315W |
RX 9070 XTのスペックは、先代モデルのRX 7900 XTと比べると、スペックが落とされており、一見、大きな進化をしていないように見えます。
しかし、この数値だけでRX 9070 XTを判断するのは早計です。
鍵を握るのは、最新の「RDNA 4」アーキテクチャの採用です。RDNA 4は、RDNA 3に比べて、CUあたりの処理効率が劇的に向上しており、スペック表の数字を超えたゲームパフォーマンスが期待できます。
ちなみに、RX 9070 XTの下位モデルに無印版のRX 9070がありますが、CU数などが若干落とされており、その分、省電力になっているGPUと言えます。
純粋なゲーム性能では、RX 9070 XTの方が上です。
ビデオカード単体の価格は10万円前後といった感じです。
RX 9070 XTの特徴
FSR4に対応

AMDの最新アップスケーリングの「FSR 4」は機械学習(ML)ベースになっており、従来のFSR 3.1から大幅に画質が向上しています。
この技術は、RDNA 4アーキテクチャを採用したAMD Radeon RX 9000シリーズ専用となっています。もちろん、RX 9070 XTも対応しています。


草木の描写を比較すると、FSR3ではボヤケて描写されているのに対して、FSR4ではクッキリと描写されています。

FSR4はAdrenalin Edition上でオーバーライドすることで設定できます。

オーバライドするとゲーム上のアップスケーリングがFSR3ではなく、FSR4になっていれば設定は成功です。
VRAM16GB

VRAMはGPU専用のメモリで、主にゲーム中に激しく消費します。VRAMにはGPUごとに容量が決まっていて、このVRAM容量の消費がGPUの搭載量を超えたとき、ゲームのフレームレートがガタ落ちし、快適性が損なわれます。
ゲームによっては最悪、起動しないなんてことも。
そんなVRAMですが、RX 9070 XTのVRAM容量は16GBと余裕の容量です。高負荷なゲームでは、VRAM不足の心配なく、ゲームをプレーできます。
MFGに対応する機能がない

「MFG(Multi Frame Generation)」は、最大3つのフレームを追加し爆発的にフレームレートが伸びる、最新フレーム生成技術です。
このMFGは、NVIDIAのRTX 50シリーズ限定で使える機能です。当然のことながら、RADEONでは使えません。また、RADEON側では現時点でMFGのような技術は実装されていません。
そのため、フレームレートでは、MFGを有効にしたNVIDIA勢を大きく下回るケースが多々あります。
パストレーシング性能が低い
パストレーシングは、従来のレイトレーシングをさらに進化させた、まさに「真のレイトレーシング」と呼べる技術です。
この技術の最大の魅力は、現実世界の光の動きを忠実に再現することで、光の反射や影を驚くほどリアルにし、ゲームの臨場感を格段に高めてくれる点にあります。
しかし、その圧倒的なリアリティと引き換えに、パストレーシングは非常に高いグラフィック負荷がかかるという大きなデメリットがあります。
特に現状では、NVIDIAのGPUがこの分野をリードしており、AMD RADEONにとっては最もパフォーマンスを出しづらい技術とされています。
そのため、RADEONのGPUでパストレーシングを有効にすると、期待したようにフレームレートが伸びず、スムーズなゲーム体験を得るのが難しくなる可能性があります。
検証環境
検証するゲームタイトルについて
ここからはゲームベンチマークでRX 9070 XTのゲーム性能を検証します。
検証したゲームタイトルは下記の8タイトルです。
- Assassin’s Creed Shadows
- Ghost of Tsushima
- Monster Hunter Wilds
- Cyberpunk 2077
- Marvel Rivals
- FFXIV: 黄金のレガシー
- Stellar Blade
- F1 25
ゲームのグラフィックはそのゲーム内の最高設定にしています。また、フレーム生成は有効にし、MFG対応ゲームにおいてはMFG×4に設定しています。
比較対象のグラボ
RX 9070 XTの比較対象として下記のグラボを用意しました。
- RTX 5070 Ti(VRAM16GB)
- RTX 5070(VRAM12GB)
- RTX 5060 Ti(VRAM16GB)
- RX 9060 XT(VRAM16GB)
RTX 5060 TiはVRAM16GB搭載モデルを使用しています。

3Dグラフィックス性能測定のためのベンチマークソフトの3D Markで、今回検証に使用したGPUのスコアを比較しました。
ラスタライズ性能をテストするSteel Nomad、レイトレーシング性能をテストするSpeed Wayの2種類のテストを使用しました。
RX 9070 XTのスコアはライバルのRTX 5070 Tiと比較すると、Steel Nomadでは約8%上回っていますが、Speed Wayでは約19%下回っています。
RDNA4アーキテクチャで、レイトレーシング性能は大きく向上しましたが、ライバルのRTX 5070 Tiとの比較では若干不利な印象です。
検証機のスペック

| パーツ | 製品名 |
|---|---|
| マザーボード | ASUS ROG STRIX B650-A GAMING WIFI |
| CPU | Ryzen 7 7800X3D |
| ビデオカード | ZOTAC GAMING GeForce RTX 5050 SOLO |
| CPUクーラー | PCCOOLER GAME ICE K4 |
| メモリ | Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモ (16GB×2、DDR5-4800) |
| システム用SSD | WD_BLACK SN770 NVMe |
| アプリケーション用SSD | Kingston NV3 |
| 電源 | MSI MAG A850GL PCIE5 |
| PCケース | 長尾製作所 SMZ-2WBT-ATX |
| OS | Windows 11 HOME(24H2) |
| 電源プラン | バランス |
CPUにはRyzen 7 7800X3Dを使用しています。3DVキャッシュを搭載しており、ゲーム性能が非常に高いCPUです。RX 9070 XTの性能を最大限引き出すことができます。


「玄人志向 RD-RX9070XT-E16GB/TP」です。トリプルファン仕様のモデルで、カード長は289mmとギリギリ300mm以内に収まります。パックプレートも装着済みです。
RX 9070 XTのゲーム性能
Assassin’s Creed Shadowsの平均fps

・画質:最高
・レイトレーシング:全体的に拡散+反射
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
・フレーム生成:有効

RX 9070 XTの平均フレームレートは、フルHDで138fps、WQHDで122fps、4Kで91fpsでした。
NVIDIA製のGPUはMFG×4を有効にしているので、平均フレームレートで、ライバルのRTX 5070 TiだけでなくRTX 5070も下回っています。
ただ、同じくMFG×4を有効にしているRTX 5060 Tiを上回っているので、MFG抜きでもRX 9070 XTは十分高いフレームレートを出せています。
Ghost of Tsushimaの平均fps

・画質:非常に高い
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※1分間フィールドを馬で駆け抜けてるときに計測

RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで331fps、WQHDで279fps、4Kで193fpsでした。
RADEON有利なゲームなので、平均フレームレートは、ライバルのRTX 5070 Tiを大幅に上回ります。
Monster Hunter Wildsの平均fps

・画質:ウルトラ
・レイトレーシング:高
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークソフトで計測

RX 9070 XTの平均フレームレートは、フルHDで184fps、WQHDで178fps、4Kで125fpsでした。
RADEON有利なゲームなので、平均フレームレートは、ライバルのRTX 5070 Tiを大幅に上回ります。
Cyberpunk 2077の平均fps

・画質:オーバードライブ
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測

RX 9070 XTの平均フレームレートは、フルHDで146fps、WQHDで94fps、4Kで46fpsでした。
オーバードライブ設定にすると自動的にパストレーシングが有効になります。
そのため、パストレーシング性能が高く、さらにMFGが適用できるNVIDIA製のGPUは平均フレームレートが伸びやすいです。
RX 9070 XTの平均フレームレートは、ライバルのRTX 5070 Tiだけでなく、RTX 5060 Tiも下回っています
Marvel Rivalsの平均fps

・画質:最高
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測

RX 9070 XTの平均フレームレートは、フルHDで202fps、WQHDで191fps、4Kで120fpsでした。
NVIDIA製のGPUはMFG×4を有効にしているので、平均フレームレートが爆発的に伸びています。そのため、ライバルのRTX 5070 TiだけでなくRTX 5060 Tiも下回っています。
FFXIV: 黄金のレガシーの平均fps

・画質:最高
※ベンチマークソフトで計測

RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで145fps、WQHDで90fps、4Kで42fpsでした。
このゲームはNVIDIAに最適化されているため、平均フレームレートで、ライバルのRTX 5060 TiだけでなくRTX 5060も下回っています。
Stellar Bladeの平均fps

・画質:とても高い
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※1分間走ってフレームレートを計測

RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで212fps、WQHDで199fps、4Kで132fpsでした。
NVIDIA製のGPUはMFG×4を有効にしているので、平均フレームレートが爆発的に伸びています。そのため、RX 9070 XTの平均フレームレートは、ライバルのRTX 5070 TiだけでなくRTX 5060 Tiも下回っています。
F1 25の平均fps

・画質:超最大
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測

RX 9060 XTの平均フレームレートは、フルHDで159fps、WQHDで98fps、4Kで44fpsでした。
超最大設定にしているので、パストレーシングが有効になっています。
NVIDIA製のGPUはパストレーシング性能が高く、さらにMFG×4を有効にしています。
そのため、RX 9070 XTの平均フレームレートは、ライバルのRTX 5070 TiだけでなくRTX 5060 Tiも下回っています。
RX 9070 XTの消費電力

ラトックシステムのワットチェッカーの「RS-BTWATCH2」を使用し、GPU単体ではなく、システム全体の消費電力を測定します。
上記の表は、FFXIV: 黄金のレガシーベンチマーク(4K・最高設定)実行中の平均・最大消費電力をまとめたものです。
RX 9070 XTの消費電力は、ライバルのRTX 5070 Tiより上で、RX 9060 XTと比べると約1.6倍高いです。

ゲームでフレームレート制限(例えば144fpsまで)を設定すれば消費電力は大分大人しくなります。逆に、フレームレートを無制限にすると消費電力は増大します。
RX 9070 XTのレビューまとめ


- 4Kゲーミングに最適
- コストパフォーマンスが高い
- FSR4に対応
- MFGに相当する機能なし
- パストレーシング性能が低い
RADEONの最新GPU「RX 9070 XT」を一言で表すなら、「圧倒的なコストパフォーマンスを誇る4KゲーミングGPU」です。
競合製品である「RTX 5070 Ti」よりも2万円以上安価ながら、4K解像度でもカクつくことなく、多くのゲームを快適にプレイできる性能を備えています。
特に注目すべきは、最新ゲームに欠かせない大容量16GBのVRAMです。VRAMが8GBのグラボでは動作が厳しくなってきている重量級タイトルも、RX 9070 XTなら余裕を持って快適に楽しめます。
また、従来のRADEONが苦手としていたレイトレーシング性能も大きく進化。NVIDIA勢にはわずかに及ばないものの、実用レベルとしては十分高いレベルに到達しています。
アップスケーリングもFSR4に対応することで、画質を維持したままフレームレート向上を図ることができます。
ただ、弱点も存在し、それは、非常に負荷の高い「パストレーシング」の処理能力が低いことと、MFGに対応する機能がないことです。
パスレーシングを有効化すると、フレームレートが極端に低下し、場合によっては格下の「RTX 5060 Ti」よりもパフォーマンスが落ちてしまうこともあります。
そのため、RX 9070 XTで最高の快適さを求めるなら、パストレーシングの設定は迷わずオフにしてプレーすることを強く推奨します。
また、MFGがないことで、その機能をオンにしたNVIDIAのGPUに平均フレームレートで大きな差をつけられてしまいます。
たしかに弱点はありますが、10万円代という価格帯で最高の4Kゲーミング体験が手に入ることを考えれば、非常に魅力が高いGPUと言えます。
RX 9070 XTのおすすめゲーミングPC
【FRONTIER】FRGKA620ASR/WS1023/NTK


| FRGKA620ASR/WS1023/NTKのスペック | |
|---|---|
| OS | Windows 11 home |
| CPU | Ryzen 7 7800X3D |
| GPU | RX 9070 XT 16G |
| CPUクーラー | 空冷 |
| メモリ | 32GB(16GB×2) |
| ストレージ | 1TB(M.2 SSD) |
| マザーボード | Asrock A620M-HDV/M.2+ |
| 電源 | 750W 80 PLUS PLATINUM |
| 無線LAN | 無し |
| 保証期間 | 1年 |
| 価格 | 245,980円 |
まとめ
RX 9070 XTは4Kゲーミング可能な性能を有しておきながら価格が抑えられているのが最大の魅力です。
搭載ゲーミングPCも最安モデルであれば、20万円代中盤で購入でき、比較的買いやすいです。
VRAM容量を気にせずゲームをプレーしたい、そしてなるべく予算を15万円以内に抑えたいというのであれば、RX 9060 XT搭載モデルはおすすめできます。
よくある質問まとめ
- 4Kゲーム用として、RX 9070 XT搭載モデルはおすすめですか?
-
4K解像度に設定しても十分ゲームはプレー可能です。ただし、レイトレーシングやパストレーシングを有効にした場合、フレームレートは落ちる傾向があるので、その点は注意が必要です。
- RX 9070 XTとRTX 5070 Tiで迷っています。どちらがいいですか?
-
基本的なゲーム性能ではRTX 5070 Tiが上です。MFG対応、パストレーシング性能が高いなど、RX 9070 XTにはない魅力があります。ただ、価格に関してはRX 9070 XTの方が2万円以上安いです。価格重視であれば、RX 9070 XTを選んでも問題ありません。
- CPUは何がおすすめですか?
-
RX 9070 XTのゲーム性能はかなり高いため、ゲーム性能の高いCPUがおすすめです。おすすめはRyzen 7 7800X3D、Ryzen 7 9800X3Dといった3DVキャッシュを搭載したゲーム性能特化のCPUです。次点で、Ryzen 7 9700Xあたりもおすすめです。
- RX 9070 XTの消費電力が高いので気になります。何がいい方法はありますか?
-
ゲーム中のフレームレートを制限するだけでも、消費電力はかなり抑えられます。また、Adrenalin Edition上で、電力制限をかけて省電力化するのもありです。
- FSR4に設定したらフレームレートは伸びますか?
-
残念ながらFSR4に設定してもフレームレートは伸びません。FSR4はあくまでも画質向上が目的です。

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