RTX 5060 Tiは、2025年4月20日に発売されたRTX 50シリーズのミドルレンジモデルに位置付けられるGPUです。
先代のRTX 4060 Tiからスペックが単純に進化しただけでなく、 フレーム1枚あたり最大3つのフレームを生成できるMFGに対応するなどの特徴も兼ね備えています。
そして、RTX 4060 Tiの時と同じく、VRAM8GB搭載版とVRAM16GB搭載版の2つのモデルが展開されているのも大きな特徴となっています。
本記事では、RTX 5060 Tiの16GB版の基本性能や特徴を詳しく解説し、実際のゲームでのパフォーマンスを検証します。最後にRTX 5060 Ti搭載のおすすめゲーミングPCを紹介します。
RTX 5060 Tiの仕様
| RTX 5060 Ti | RTX 4060 Ti | |
| アーキテクチャー | Blackwell | Ada Lovelace |
| SM | 36基 | 34基 |
| CUDAコア | 4,608基 | 4,352基 |
| RTコア | 36基(Gen4) | 34基(Gen3) |
| Tensorコア | 144基(Gen5) | 136基(Gen4) |
| L2キャッシュ | 32MB | 32MB |
| ベース/ブーストクロック | 2407MHz / 2,572MHz | 2,310MHz / 2,535MHz |
| VRAM | GDDR7 16GB/8GB | GDDR6 16GB/8GB |
| メモリーデータレート | 28Gbps | 21Gbps |
| メモリーバス幅 | 128bit | 128bit |
| メモリー帯域 | 448GB/s | 288GB/s |
| PCI-Express | Gen5×8 | Gen4×8 |
| グラフィックスカード電力 | 180W | 160W |
先代モデルのRTX 4060 Tiと比較すると、アーキテクチャーなどの世代は新しくなっていますが、SM数、CUDAコア数などのスペックはほとんど同じです。
大きく変わった点はVRAMの世代が新しくなったことです。GDDR6からGDDR7に進化したことにより、メモリ帯域はRTX 4060 Tiと比べて約43%も向上しています。
これによってより高負荷な状況でもパフォーマンスが発揮しやすくなりました。
ビデオカード単体の価格ですがVRAM16GB版は7万円代前半を維持している印象です。
RTX 5060 Tiの特徴
MFGに対応

「MFG(Multi Frame Generation)」は、NVIDIAが開発した画期的な新しいフレーム生成技術です。
従来のフレーム生成技術(既存のDLSS FGなど)が1つのレンダリングフレームにつき1つの追加フレームを生成していたのに対し、MFGは最大で3つのフレームを追加生成できます。
これによって、DLSS FGよりも遥かに高いフレームレートを実現し、よりスムーズで快適なゲーム体験が可能です。
ただし、この先進的なMFG技術は、NVIDIAの最新グラフィックボード「RTX 50シリーズ」でのみ利用可能な限定機能です。もちろん、RTX 5060も対応しています。

MFGはNVIDIA AppからDLSSオーバーライドすることで設定できます。

若しくはゲーム上のオプションから直接設定できます。
VRAM16GB

VRAMはGPU専用のメモリで、主にゲーム中に激しく消費します。VRAMにはGPUごとに容量が決まっていて、この容量を超えたとき、ゲームの快適性が損なわれる危険性があります。
具体的にはフレームレートが全くでない、そして最悪、ゲームが起動しないなんてことも。そんなVRAMですが、RTX 5060 TiのVRAM容量は16GBと余裕の容量です。
高負荷なゲームでは、VRAM不足の心配なく、ゲームをプレーできます。
ただし、VRAM8GB版だと、VRAM不足に陥いる可能性が高くなるので、その点は注意が必要です。
検証環境
検証するゲームタイトルについて
ここからはゲームベンチマークでRTX 5060 Tiのゲーム性能を検証します。
検証したゲームタイトルは下記の8タイトルです。
- Assassin’s Creed Shadows
- Ghost of Tsushima
- Monster Hunter Wilds
- Cyberpunk 2077
- Marvel Rivals
- FFXIV: 黄金のレガシー
- Stellar Blade
- F1 25
ゲームのグラフィックはそのゲーム内の最高設定にしています。また、フレーム生成は有効にし、MFG対応ゲームにおいてはMFG×4に設定しています。
比較対象のグラボ
RTX 5060 Tiの比較対象として下記のグラボを用意しました。
- RTX 5070(VRAM12GB)
- RTX 5060(VRAM8GB)
- RX 9060 XT(VRAM16GB)
- Arc B580(VRAM12GB)
RX 9060 XTはVRAM16GB搭載モデルを使用しています。

3Dグラフィックス性能測定のためのベンチマークソフトの3D Markで、今回検証に使用したGPUのスコアを比較しました。
ラスタライズ性能をテストするSteel Nomad、レイトレーシング性能をテストするSpeed Wayの2種類のテストを使用しました。
RTX 5060 TiのスコアはライバルのRX 9060 XTと比較すると、Steel Nomadではほぼ互角で、Speed Wayでは約35%上回っています。
レイトレーシング性能ではRX 9060 XTを大きく上回っています。
ただ、上位のRTX 5070との差は大きく、Steel Nomadでは約34%、Speed Wayでは約37%下回っています。
検証機のスペック

| パーツ | 製品名 |
|---|---|
| マザーボード | ASUS ROG STRIX B650-A GAMING WIFI |
| CPU | Ryzen 7 7800X3D |
| ビデオカード | ZOTAC GAMING GeForce RTX 5050 SOLO |
| CPUクーラー | PCCOOLER GAME ICE K4 |
| メモリ | Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモ (16GB×2、DDR5-4800) |
| システム用SSD | WD_BLACK SN770 NVMe |
| アプリケーション用SSD | Kingston NV3 |
| 電源 | MSI MAG A850GL PCIE5 |
| PCケース | 長尾製作所 SMZ-2WBT-ATX |
| OS | Windows 11 HOME(24H2) |
| 電源プラン | バランス |
CPUにはRyzen 7 7800X3Dを使用しています。3DVキャッシュを搭載しており、ゲーム性能が非常に高いCPUです。RTX 5060 Tiの性能を最大限引き出すことができます。


「ASUS PRIME GeForce RTX 5060 Ti 16GB GDDR7」です。カード長は304mmと300mmを超えていますが、SFF(Small Form Factor)規格に対応しているので、意外とコンパクトです。
RTX 5060 Tiのゲーム性能
Assassin’s Creed Shadowsの平均fps

・画質:最高
・レイトレーシング:全体的に拡散+反射
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
・フレーム生成:有効

RTX 5060 Tiの平均フレームレートは、フルHDで132fps、WQHDで120fps、4Kで93fpsでした。
MFG×4を有効にすることで、RX 9060 XTを大きく上回る平均フレームレートを出せます。
Ghost of Tsushimaの平均fps

・画質:非常に高い
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※1分間フィールドを馬で駆け抜けてるときに計測

RTX 5060 Tiの平均フレームレートは、フルHDで135fps、WQHDで116fps、4Kで82fpsでした。
RADEON有利なゲームなので、平均フレームレートは、RX 9060 XTを大幅に下回ります。
Monster Hunter Wildsの平均fps

・画質:ウルトラ
・レイトレーシング:高
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークソフトで計測

RTX 5060の平均フレームレートは、フルHDで100fps、WQHDで85fps、4Kで60fpsでした。
ウルトラ設定では、VRAM消費が8GBを超えるため、VRAM8GBのRTX 5060の平均フレームレートは大きく伸び悩んでいます。
一方、RTX 5060 TiはVRAMを16GBを搭載しているため、目立ったフレームレートの落ち込みは一切ありません。4Kですら平均60fpsを達成しています。
Cyberpunk 2077の平均fps

・画質:オーバードライブ
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測

RTX 5060 Tiの平均フレームレートは、フルHDで178fps、WQHDで114fps、4Kで59fpsでした。
オーバードライブ設定にすると自動的にパストレーシングが有効になり、VRAM消費が8GBを超えます。そのため、VRAM8GBのRTX 5060の平均fpsは伸び悩んでいます。
一方、RTX 5060 TiはVRAM16GB搭載しているため、VRAM不足の影響は受けず、フレームレートは大きく伸ばしています。
パストレーシングが苦手なRX 9060 XTに対しても平均フレームレートで大きく上回っています。
Marvel Rivalsの平均fps

・画質:最高
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測

RTX 5060 Tiの平均フレームレートは、フルHDで261fps、WQHDで199fps、4Kで123fpsでした。
MFG×4を有効にすることで、RX 9060 XTを大幅に上回る平均フレームレートを出せます。
FFXIV: 黄金のレガシーの平均fps

・画質:最高
※ベンチマークソフトで計測

RTX 5060 Tiの平均フレームレートは、フルHDで168fps、WQHDで110fps、4Kで57fpsでした。
このゲームはNVIDIAに最適化されているため、平均フレームレートでRX 9060 XTを大きく上回っています。
Stellar Bladeの平均fps

・画質:とても高い
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※1分間走ってフレームレートを計測

RTX 5060 Tiの平均フレームレートは、フルHDで408fps、WQHDで276fps、4Kで169fpsでした。
MFG×4を有効にすることで、フルHDで脅威の平均400fpsを超えるフレームレートを出せます。
MFGが使えないRX 9060 XTの差は凄まじいものとなっています。
F1 25の平均fps

・画質:超最大
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測

RTX 5060 Tiの平均フレームレートは、フルHDで210fps、WQHDで121fps、4Kで58fpsでした。
超最大設定にするとパストレーシングが有効になり、負荷は非常に重くなります。
MFG×4を有効にすることで、RX 9060 XTを大きく上回る平均フレームレートを出せます。フルHD、WQHD、4Kのそれぞれの解像度の平均フレームレートにおいて、倍以上の差が開いています。
RTX 5060 Tiの消費電力

ラトックシステムのワットチェッカーの「RS-BTWATCH2」を使用し、GPU単体ではなく、システム全体の消費電力を測定します。
上記の表は、FFXIV: 黄金のレガシーベンチマーク(4K・最高設定)実行中の平均・最大消費電力をまとめたものです。
RTX 5060 Tiの消費電力は、RTX 5060とRX 9060 XTの丁度中間に位置します。RTX 5060と比べると、ゲーム性能は大きく向上しているので、ワットパフォーマンスは非常に優秀です。
RTX 5060 Tiのレビューまとめ

- ゲーム性能はRX 9060 XTを上回る
- MFGを使うと爆発的にフレームレートを伸ばすことが可能
- フルHDゲーミングに最適
- WQHDゲーミングも十分可能
- ゲームによっては4Kゲームも十分可能
- ワットパフォーマンスは優秀
- RX 9060 XTよりコストパフォーマンスは下がる
- 負荷の重いゲームの4Kは厳しい
- VRAM8GB版とVRAM16GB版の2種類があり、分かりづらい
RTX 5060 Tiは、RX 9060 XT以上のゲーム性能を持ち、さらにVRAM16GBあるので、VRAM容量を気にせずゲームを遊べるGPUです。
RTX 5060のようなVRAM8GB搭載のGPUでは全くフレームレートが出ないゲームでも、VRAM16GB搭載しているRTX 5060 Tiではフレームレートは全く落ちないです。
さらにMFGを使えば、RX 9060 XTを圧倒する驚異的なフレームレートを出すことができます。
ただし、4Kではゲームによっては厳しいです。VRAM容量は足りていますが、上位のRTX 5070との差は大きく、余裕をもっての4Kでゲームを遊べる性能はありません。
基本的にWQHDがメインターゲットと考えた方がいいです。
RTX 5060 TiのおすすめゲーミングPC
【Z1series】Ryzen7 5700x・RTX5060Ti 16G

| 【Z1series】Ryzen 7 5700X・RTX 5060 Ti 16Gのスペック | |
|---|---|
| OS | Windows 11 home |
| CPU | Ryzen7 5700x |
| GPU | RTX 5060 Ti 16GB |
| CPUクーラー | 空冷 |
| メモリ | 32GB(16GB×2) |
| ストレージ | 1TB(M.2 SSD) |
| マザーボード | MSI A520M-A PRO |
| 電源 | 650W 80 PLUS BRONZE |
| 無線LAN | 無し |
| 保証期間 | 1年 |
| 価格 | 164,800円 ※クーポン「OZM2501」適用価格 |
まとめ
RTX 5060 TiはVRAM16GB搭載していることによって、VRAM8GBのRTX 5060ではプレーできなかったゲームも余裕をもってプレーできます。
今後、VRAM消費が激しいゲームが出てきても、VRAM16GBあるRTX 5060 Tiであれば、比較的余裕をもって対処可能です。
VRAM容量を気にせずゲームをプレーしたい、そしてなるべく予算を抑えたいというのであれば、RTX 5060 Ti搭載モデルはおすすめできます。
よくある質問まとめ
- RTX 5060 Ti搭載モデルは初心者におすすめですか?
-
VRAM16GB版搭載モデルでも、一番安いモデルで15~16万円代で購入できるので、初心者の方でも比較的買いやすいです。
- RTX 5060 TiにはVRAM8GB版がありますが、VRAM16GB版とどっちがおすすめですか?
-
今回の検証で分かったようにどんなにゲーム性能に優れてもVRAMが足らなければ、全くフレームレートが出ません。将来性のことを考えると多少高くても、VRAM16GB版が圧倒的におすすめです。
- CPUは何がおすすめですか?
-
RTX 5060 Tiはミドルクラス帯のGPUですが、侮れないゲーム性能を持っています。Ryzen 5 4500のようなゲーム性能が低いCPUだと間違いなくRTX 5060 Tiの性能を引き出せません。最低でもRyzen 7 5700 Xあたりをおすすめします。
- RTX 5060 TiとRX 9060 XT、どちらがおすすめですか?
-
基本的なゲーム性能はRTX 5060 Tiの方が優秀です。MFGが使えたり、パストレーシング性能が高いなど、RX 9060 XTにはない強みがあります。ただ、コストパフォーマンスでは、RX 9060 XTに軍配が上がります。なるべく低予算でVRAM16GB搭載モデルが欲しいのなら、RX 9060 XTがおすすめです。
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